住宅を購入するときの補助として長い間親しまれている所得税・住民税の「住宅ローン減税」の制度が2019年、一部変更になることが税制大綱にて発表されました。
今回はその概要や、それによってどう税額に影響があるのか。
また、いつ住宅ローンを組んだり家を建てれば一番お得なのかという点を掘り下げてみました。
目次
住宅ローン減税とは
まずはじめに、住宅ローン減税はとても古い制度であり、調べたところ1972年から始まっているようです。
「住宅取得控除」という税額控除から始まった制度です。
当時は現在と違い、ローンで購入しなくても控除がされたようです。
当時はまだ高度成長期でどんどん建物も建った時代でしたが、バブル崩壊や長期に渡るその後の景気低迷を受け、いまさら止めることもできなくなってしまった制度ということも言えるでしょう。
その制度も、消費税の導入や、3%→5%、5%→8%に上がるときの「駆け込み需要」や増税後の住宅市場の落ち込みを考慮しながら時代とともに変わっていきました。
そして2019年。
消費税率が10%に引き上げられる事が決定している中、それに対応するように制度が変更になる予定です。
消費増税で変わるポイント
では、制度はどのように変わるのでしょうか。
具体的な説明をしたいと思います。
現行の制度
現在の制度(増税前である2018年現在)では、
①毎年末時点の
②住宅ローンのローン残高の1%を上限に
③住宅取得から最長10年間
④毎年最大40万円まで
⑤通算400万円まで
⑥毎年の所得税額から控除できる
⑦更に控除しきれない場合は、毎年最大13万6,500円まで翌年の住民税額から控除できる
という制度です。
つまり、ローンが多ければ多いほど、それに対する1%の金額が大きくなるため、沢山の控除がされる仕組みです。
改正後の制度
基本的な制度は大きく変わりませんが、
今回の改正により、
上記③の「最長10年間」の部分が「最長13年間」まで延長されることになりました。
単純に3年延長されるというわけではなく、延長された11年目から13年目までは特別な計算がされることとなります。
ちなみに、1年目から10年目までの計算は今までと変わりませんので、単純に延長された分のメリットが出てくるわけです。
具体的な計算
では、具体的な税額控除の計算を見てみましょう。
1年目から10年目までの10年間
当初の10年間に関しては、従来の制度をそのまま適用できますので変更点はありません。
11年目から13年目の3年間
この3年間は、
①住宅ローンの年末残高(4,000万円を限度)の1%
②住宅の税抜きの取得価格(4,000万円を限度)の2%を3で割った額
を比較し、どちらか少ない額をそれぞれ控除できる計算となります。
単純に、10年後のローン残高を考えると、35年ローンの場合だとローンは当初の70%程度残っている計算です。
例えば3,000万円の住宅ローンだった場合は約2,100万円も残っているでしょう。
そのうち、住宅部分の占める金額が50%だとした場合、
①年末残高2,100万円✕1%=21万円
②住宅の税抜き取得価格1,500万円÷1.1(税抜き計算)✕2%÷3=約9.1万円
となり、②の方が少ないので約9.1万円が税額から控除できます。
12年目、13年目もローン残高は減っていくでしょうが、②を下回る事はないでしょうから、単純に約9.1万円✕3年=約27.3万円が追加で減税処置されることになります。
約30万円。大きいですよね。
増税分と比べてみる
上記例で言えば、約30万円も税金が減ることになりますが、もちろんこれは消費税が10%に増税された金額で購入した場合に限ります。
ですので、消費税が2%上がる分と比べてみないとダメですよね。
ではその2%がいくらになるのか、早速計算してみましょう。
1,500万円が税込みの住宅取得金額となります。
10%の消費税を抜けば、1,500万円÷1.1=1,364万円が税抜きの住宅金額となります。
この2%が増税による追加支払い額となるわけですから、
1,364万円✕2%=約27.3万円 となります。
結局同じ
以上の計算を見てわかるように、消費税が余分に27.3万円掛かるけど、住宅ローン減税の延長分が27.3万円減税となります。
つまり、プラスマイナスはゼロとなるわけです。
結局増税した分がそのまま減税として返ってくるというイメージですね。
計算式を見てみれば、鋭い人ならもっと前にピンときているかもしれません。
住宅の取得価格の2%の3分の1 ということは、単純に増税分2%を3年間で割っているだけ という事です。
ちなみに、住宅の取得価格分だけを対象としているのは、消費税は土地の売買に対しては課税されないため、その影響を無くすための措置と言えます。
結局いつマイホームを建てるのがお得なの?
では結局のところ、いつ家を立てたり購入したりするのが良いのでしょうか。
上記の計算から、増税前でも増税後でも、最終的な支払いの金額はほぼ変わらないという結果がわかっています。
つまり、「いつ建てても良い」という事になります。
さらに言えば、「増税前に急いで建てる必要は無い」とも言えます。
これにより、住宅メーカーは安心した経営ができ、駆け込み重要のような混乱なく増税を迎えられるというわけです。
ただ、現金購入だと増税の影響をモロに食らう
普通の人なら住宅は10年以上 というか30年位のローンを組んで返していくため、このような住宅ローン控除の恩恵に授かることになります。
ですが、お金に余裕があり、住宅ローンを借りる必要の無いような場合では、増税分は完全に負担増となることになります。
まぁそんなお金持ちにとっては、その程度の負担は大したこともないでしょうけどね。
金利動向も大きなポイント
住宅ローン控除の変更について説明してきましたが、実際住宅を購入するときには消費税や減税額だけを見て決めるのはリスクがあります。
それは、総支払額に大きな影響を与える「金利」を無視しているからです。
超低金利時代ですので、金利負担は非常に小さくなってはいます。
ですが、長い期間支払っていくものなので、トータルとしては2%の増税分以上の金利支払い額になるはずです。
ですので、金利動向をしっかり読んで、金利が上がる前にローンを組むようなスケジュールを意識していきたいものです。
個人的な予測としては、消費増税により景気が上に向かうことは考えにくいので、しばらくはこの金利水準から大きく上がることは無いと思っています。
まとめ
以上、改正が発表された住宅ローン減税について見てきました。
ひとまず増税によって負担が増える事はなさそうですので、安心して住宅を決めることはできそうですね。