個人事業である程度順調に稼げるようになったとき、法人化を検討する事が多いと思います。
いざ法人化をする段階になって、迷うのが「会社形態は株式会社が良いのか、合同会社が良いのか」という点ですね。
今回は、現在の日本におけるメジャーな会社である「株式会社」と「合同会社」に焦点を当てて、どちらが良いかを考えてみましょう。
目次
個人事業から法人に変える理由
まず、個人事業主が法人に組織変更をする理由はどういう場合でしょうか。
大きく分けて、2つの点が挙げられます。
・社会的信用度を上げたい
・節税をしたい
このどちらかではないでしょうか。
細かい話をすれば、いずれ上場させたい とか、「代表取締役」の肩書がほしいとか、いろいろあるでしょうが、まずは代表的なこの2つに絞ります。
社会的信用力のアップ
法人にすると、一般的に社会的信用度がアップします。
大企業なんかは、そもそも個人との取引を禁止もしくは避けるように決まっているケースもあります。
法人にしておけば、よほど社会的な評判が悪い会社でない限り、それで取引をしない というケースは減らすことができます。
ですので、大手との取引が決まった場合や決まりそうな場合に法人化をする場合もあるでしょう。
また、従業員を雇用する場合、個人事業だとどうしても求職者が「大丈夫かな?」と心配になることがあると思います。
とりあえず「株式会社」なら安心 というような認識も一般的でしょう。
よりよい人材を獲得するためという観点でも社会的信用度が重要になります。
よくよく考えればあまり合理性のある話ではないように感じますが、現状の日本ではこのような理由で法人化する場合があります。
節税
法人化をすれば、個人事業のときと比べ、いろいろな支出を経費扱いにできます。
それにより、支払う税金を減らすことができる可能性があります。
また、事業で損失がでたときには、その損失を『繰越欠損金』として10年間、黒字のときに差し引くことが可能です。
個人事業だとこの期間は3年ですので、法人が優遇されているのが分かると思います。
まぁもちろん欠損金なんて無いほうが良いと思いますがね。
これにより、課税所得を減らすことができ、結果として節税できるという事になります。
節税の方が理由としては大きい
法人化する2つの理由を挙げましたが、実質的には節税ができる点の方が法人化の理由として多いと思います。
ですが、税金計算の結果によってメリットが出る場合と出ない場合がありますので、慎重に判断すべきでしょう。
株式会社か合同会社かどちらか
法人化を決意したとき、次に悩むのは『株式会社』か『合同会社』かどちらにしようか、ということだと思います。
現在の会社法という法律では、会社形態は4つあります。(NPO法人等は除きます)
『株式会社』『合同会社』『合資会社』『合名会社』の4つです。
一般的には合資会社と合名会社は選ばれる事は殆どありません。
法人化のメリットである『有限責任』ではないからです。
細かくはここでは説明しませんが、この2つは最初から除外して良いでしょう。
規模を大きくしたい場合は株式会社
株式会社は、最初からある程度の売上規模や従業員数を抱え、今後も大きく成長させていくという志向の場合にマッチする形態です。
大きな資金調達をする場合に、上場ができたり、そこまで大きな話ではなくても新株を発行して資金調達ができたり、取締役という役員が経営にあたるという仕組み上、会社が大きく育つ見込みがある場合には、株式会社が最も適しているでしょう。
また社会的信用度も、概念が新しい合同会社よりも高いため、商売のしやすさは少し有利と言えるでしょう。
個人事業の延長で一人の能力で事業するなら合同会社
一方、個人事業主がそのまま一人で業務に従事する場合や、個人の能力をベースに商売をしていく場合には合同会社が適しています。
節税ができる範囲や、有限責任である点は株式会社と全く同じでありながらも、設立費用が少なかったり、役員の改選や決算の広告等の運営上の手間や費用を下げることができます。
ただ、やはり株式会社に比べ新しい形態であることで認知が不足していたり、合名会社や合資会社といった「合」から始まる形態をやや下に見られることもあるようです。
会社法適用前に存在していた『有限会社』が、株式会社に比べ信用度が低かったのと同じように合同会社も一歩信用度が劣るようです。
費用で比較
一応、法人化するときに掛かる費用や、運営中に掛かるコストを計算してみます。
それぞれ、設立の手続きや決算公告の手続きを自身で行った場合の比較となります。
税理士や司法書士などに委託した場合は別途手数料がかかってきますのでご注意ください。
最低設立費用
株式会社の場合(資本金2,143万円未満の場合)
登録免許税:15万円
公証人に対する定款認証費用:5万円
定款の謄本登記手数料:約2千円
収入印紙代(定款に貼り付け):4万円(※電子定款の場合は不要)
以上となり、最低でも20万円ちょっとは掛ります。
合同会社の場合(資本金858万円未満の場合)
登録免許税:6万円
収入印紙代(定款に貼り付け):4万円(※電子定款の場合は不要)
以上となり、6万円となります。
合同会社が14-15万円も安く出来ます
以上のとおり、合同会社を選択し、かつ電子定款を選択した場合は、6万円で設立が出来てしまいます。
決算公告
株式会社の場合は、毎事業年度ごとに、決算内容(貸借対照表)を公開する義務があります。
上場企業であればどこでもIRというようなコーナーが会社ホームページに掲載されていますよね。
でも本当は上場の有無に関わらず公開をしなくてはいけないことになっています。
ほとんどの企業が決算公告は行っていないのが現状ですが、原則として
官報に掲載する場合は、約6万円が毎年必要になります。
このコストは非常に大きいですよね。
役員改正
株式会社は、役員の任期が最長10年となり、10年に1回は役員を改正する必要があります。
もちろん同じ人が続投で構いませんが、形式的に改正手続きをする必要があります。
費用としては、登記に1万円が必要になります。
10年で1万円ならそれほど高くはありませんが、必要費用として認識する必要があります。
個人の能力で稼ぐ場合は『合同会社』がおすすめ
以上、株式会社と合同会社で異なる部分を見てきました。
会社と言えば『株式会社』という認識はやや古いものになっており、今や全会社設立の6%位が合同会社になってきているという統計もあります。
今後、合同会社の知名度や社会の認識度が上がってくることは間違いないと思います。
そう考えれば、個人事業の延長線として法人化する場合は、『合同会社』を選ぶのがベストチョイスだと思います。
また、もし想定外に軌道に乗ってきて、資本政策を考える場合にはその後の『株式会社』に組織変更も出来ますので、是非法人化を考える場合は『合同会社』も検討してみてください。