最近「イデコ」という言葉を聞く機会増えました。
ちょっと前は「NISA(ニーサ)」という言葉を良く聞いたのも今は昔。
個人的にはニーサより若い女性のニーソの方が興味があるのですが、またそれは別のお話。
さて、またまた金融業界は、ちょっと新しい仕組みに多少の親しみやすさを持つ名称をつけ、庶民からお金を搾り取ろうというコンセプトを継続しているようです。
もう騙されへんで。「そこに愛はあるんか?」ということで、
巷を賑わすナウなキーワード「iDeCo(イデコ)」について調べてみましたので、報告いたします。
誤解をしないで頂きたいのですが、喧嘩腰になってるわけではなく、単純に新しい仕組みを前に身構えているだけですので、現時点ではiDeCoについてはニュートラルな感情ですよ。
目次
iDeCoの概要
まず、iDeCoってなに?という事から。
iDeCoは、日本語でいうと「個人型確定拠出年金」です。
といってもよくわからないですよね。
(もし分かる方は次の項目「メリット・デメリット」に進んで下さい。)
さて、「個人型確定拠出年金」キーワードを「個人型」の部分と「確定拠出年金」に分解してみましょう。
個人型とは
文字のまま、個人が加入する年金という意味です。
反対語として、「企業型」という概念がありますが、これはサラリーマン各位が会社で加入する年金が該当します。
確定拠出年金とは
では、後半部分「確定拠出年金」について説明を。
と思ったのですが、まずはそれと対比の概念にある「確定給付年金」制度についてご説明をします。
その方が理解が早いでしょう。
確定給付年金とは
確定給付年金とは、加入時に「◯歳から◯円年金もらえますよ」という、給付額が確定している年金制度の事を言います。
特に、企業が従業員に対する厚生年金基金等、「企業年金制度」において使われる制度です。
旧来の日本は、株価も景気もじゃんじゃんばりばり絶好調でヤッターヤッター状態でした。
企業が独自で行う年金制度である「厚生年金基金」などは運用(債権や株とか買って元手のお金を増やすことね)のパフォーマンスが良かった時期が長く続きました。
だから、年金の原資もどんどん積み上がって行ったので、国民年金や厚生年金として毎月同じ金額を積み立てていれば、勝手に殖えて将来しっかり規定の年金を受け取ることが出来る見込みだったのです。
ですが、世界の金融システムが劇的に変化を遂げ、日本もバブルがパーンしてしまい、毎月同額の積立ではどう考えても規定の年金を支払えないゾ、きゃはは。
ということがウスウスわかってきたのです。
確定給付年金は、給付する金額が決まっているので、運用が想定通り行かなかった場合は掛け金を積み増す必要が出てきます。
その掛け金の積み増しは企業の正常な運営という観点からはリスクが高いものでした。
その結果、確定拠出年金制度が増えてくることになります。
改めて確定拠出年金とは
では改めて。
確定拠出年金は、十数年前位にメディアでよく聞いた「401K」と同義になります。
数値の後にKが付くと、「キツイ」「汚い」「給料安い」の3kの他に398個もあるんだ などとは全然思わなくても良いです。
企業型の確定拠出年金は、ある程度日本には根付いて来ましたが、要は
「リーマンどもよ、会社は計画性の無いお前らに代わって年金を毎月定額で積み立ててやるぞ。ありがたく思え。でも将来いくら貰えるかは蓋を開けてのお楽しみだ。ワッハハ。」
という事です。「拠出額(支払額)」を「確定」させる事が確定拠出型の年金になります。
逆に、将来いくら貰えるかがわからない年金というのが確定拠出年金だと思って下さい。
iDeCo(個人型確定拠出年金)とは
長くなりましたが、iDeCoというのは、個人が自分の将来のために積み立てる確定拠出年金ということになります。
ここで、この制度を創った政府の思惑をざっくり丁寧に申し上げると、
「現在の公的年金制度がヤバイよヤバイよ状態なのは一切目をつむって頂いて、個人各位におかれましては公的年金を当てにせず、自分の老後は自分で守れやタコ。」
ということですよね。納得です。
政府の思惑はともかく、この将来が見えない時代において、少しでも老後資産を確保しておくというのは必要なことです。
その意味でiDeCoというのは十分検討する余地がある仕組みであると思います。
iDeCoのメリット
いままでの説明ですと、
・老後資金を自分で積み立てる
という点だけですので、別にiDeCoじゃなくても良い気がしますよね。
タンス預金を積み立ててもいいし、国債や定期預金でも良いです。
ここではiDeCoならではのメリットを挙げていきます。
- 掛け金の全額が所得控除される
- 運用益はそのまま再投資され、税金は非課税となる
- 年金受け取り時には退職所得として扱われ、退職所得控除の対象となる
という3点があります。
これは、かなり強力なメリットです。
一つ一つ見てみます。
メリット1 掛け金全額が所得控除される
節税効果として高いのが、この所得控除です。
例えば、毎月23,000円を積み立てた場合、年間で27万6千円となります。
この27万6千円が所得税・住民税の計算上、所得から控除されます。
iDeCoとは言ってみれば投資(ある意味、預金)に近い概念なのに、掛け金自体が所得控除されるのは非常に大きな節税効果を生みます。
いくらの節税効果が生まれるかは、累進課税制度の日本においては各個人の収入に応じるわけですが、例えば年収600万円位の既婚サラリーマンの場合は、恐らく、所得税+住民税で約30%が給与所得に対して課税されるはずです。
つまり、27万6千円✕30%=約8.4万円 となり、年間約8万円以上も節税効果が生まれます。
例えば現在40歳のサラリーマンがiDeCoに加入した場合、60歳までの20年間✕8.4万円=168万円ものお金を節約出来ることになります。
これは大きいです。最悪、掛け金の運用が上手くいかなくて全く元本が増えなかった場合でも、積み立てていくだけで168万円ものメリットが生まれるわけですから。
この超低金利時代において、定期預金で預けた場合の利息より、この節税効果によるプラスを選ぶべきでしょう。
メリット2 運用益は非課税となる
次のメリットは、運用益が発生した時に非課税となる点です。
例えば、株式投資の場合は、投資時の株価より売却時の株価が高かった場合、利益額の20.315%が確実に課税されます。
投資信託の場合も同様で、毎年の分配金(運用益の配分)に対して20.315%が課税されます。
ということは、利益に対して約80%しか残らないことになります。
これに対してiDeCoは、毎年運用益が出ていたとしても一切分配されませんが、そのかわりに運用益に対しては非課税となります。
これは実際に運用益が出ているか、という点が大きなポイントになります。
例
例として、iDeCoにすでに10年加入して約200万円の積立がされていたとします。
iDeCoの運用により年間5%の利益が出ていたと仮定すると、200万円✕5%=10万円が運用益となります。
通常の投資信託なら、この10万円は税金を引かれ約8万円が手元に戻ってきます。
それが、iDeCoの場合はその10万円が税金で目減りすることなく、そのまま再投資されます。
つまり、積立額が210万円にそっくりそのまま増額されることになります。
「税金引かれてもいいから運用益はすぐ手元に欲しい」という方もいるかもしれませんが、これがiDeCoの仕組みですのでそれは出来ません。
複利の魔力
税金がかからないこともですが、再投資により翌年度は運用益分に対しても運用益が発生します。
こういう雪だるま式に資産が増えることを「複利」といいます。
金融商品においてこの複利という言葉は非常に魅力的な言葉です。
メリット3 受取時には退職所得控除の対象となる
こちらも大きな節税効果です。
例えば、20年間積み立てたiDeCoの資産500万円を60歳に一括で受け取った場合、500万円に対して課税されるわけではありません。
退職金として、控除の対象となります。
具体的には、加入期間が20年以下の場合、1年につき40万円が控除されますので、40万円✕20年=800万円が控除されます。
つまり、500万円を超える控除がある計算になります。(実際には、サラリーマンとしての退職金も合算されるので控除額を超えることも考慮して下さい)
つまり、一切税金がかからないということです。
大きな節税効果が期待できる
以上の3つの節税効果により、資産が目減りすること無く将来の年金資産を形成できることになります。
これは非常に大きなメリットですよね。
iDeCoの隠れたメリット(児童手当)
実はiDeCoにはあまり触れられていないメリットがもう一つあります。
それは「児童手当の所得制限の計算上、iDeCoの掛け金分を控除できる」という点です。
子供がいる家庭ならだいたい受給している「児童手当」ですが、この手当には実は所得制限があります。
詳しい所得金額には触れませんが、その額を1円でも超えてしまうと児童手当が5,000円に一律となってしまいます。
通常3歳未満の場合は月15,000円もらえますので、月1万円も受給額が減ってしまうことになりますので、大きな損ですよね。
しかもその所得制限額は意外とボーダーが低いこともあり、ちょっと頑張っているフリーランスなどの場合は引っかかってしまう場合もあります。
iDeCoの掛け金は、その所得制限の所得金額の計算上、控除することができるのです。
例えば年間276,000円iDeCoに拠出しているサラリーマンの場合は、これにより84,000円の節税メリットと、120,000円の児童手当の受給権を手にすることになり、合計20万円以上の経済的な違いが生まれてきます。
子供が複数いたりすればもっと大きな差が生まれます。
iDeCoのデメリット・リスク
今まではiDeCoの良い点を見てきました。
しかし、iDeCoは良いことづくめというわけでもありません。
ある程度のデメリットやリスクもあります。
そこも考慮した上で、iDeCoを始めるかを判断してください。「こんなはずじゃなかった」というのは避けたいですよね。
デメリット・リスク1 60歳まで引き出せない
まず、この点は一番重要です。
iDeCoは老後の年金資産を長期積み立てることが前提となり、60歳まで掛け金を引き出すことは出来ません。
家を買おう、車を買おう ということで急にお金が必要になってもiDeCoに積み立てたお金は原則解約出来ません。
iDeCoは完全に余裕資金で行う必要があります。
ここは必ず計算して掛け金を決定して下さい。
将来転職したり、ボーナスが減少したりというリスクも加入前にかならず考慮しておくべきです。
デメリット・リスク2 運用が失敗する可能性
iDeCoの掛け金は、どう運用するかは各個人が選べます。
運用プランには各金融資産毎に沢山の種類があり、投資性の高いものから元本保証タイプまでさまざまです。
一般的に、運用益を期待すればするほど、運用失敗のリスクも発生することになります。
iDeCoは運用の結果、元本を下回る可能性があります。
このことはまず頭において、どういった運用プランを選ぶかを決定して下さい。
デメリット・リスク3 運用会社の倒産
これはそれほど可能性は高くないかもしれませんが、ゼロではありません。
iDeCoは長期間に渡り、決めた金融機関と取引することになります。
その長期間の間にその金融機関が破綻してしまうと、掛け金がなくなってしまうリスクもあります。
ただ、そういったリスクに対しては国がペイオフという制度を用意しています。
iDeCoは掛け金の上限額が決まっているので、ペイオフ以上の資産が積み立てられる可能性はそれほど高くなく、その点においてはそれほど心配はないかもしれません。
ただ、できれば財務が潤沢な金融機関を選んでおくことをオススメしておきます。
ペイオフとは
国が制度として金融機関の破綻に対して用意している個人の保護制度です。
1人に対して1金融機関につき元本1,000万円とその金利部分について国が保証する制度です。
これにより、金融機関の破綻により個人が被害を被るのをゼロもしくは減少させます。
iDeCoはいくら出来るのか
iDeCoは、誰でも無限に掛けられるわけではありません。
そんなことをしてしまうと、節税の為に給与のほとんどを積み立ててしまうような無謀な輩が出てきたり、それによって毎月の生活が破綻してしまうような輩が出てきてしまいますので。
それでは将来の年金もクソもなくなりますよね。
ということで、掛け金は限度があります。
掛け金上限は月1万2千円〜6万8千円までさまざま
各個人により、掛け金の上限は大きくことなります。
通常の中小企業のサラリーマンの場合は、
・厚生年金加入+企業年金なし のパターンが多いのでは無いでしょうか。
その場合は月額23,000円 年額276,000円 が上限となります。
生活資金に余裕がある場合は掛け金上限まで掛けることで節税のメリットを最大限にすることが出来ます。
が、くれぐれも当面大きな出費がある方はそのシミュレーションもして掛け金を決定してくださいね。
掛け金の変更
iDeCoは60歳まで解約は出来ませんが、掛け金は変更することが出来ます。
WEBで簡単に変更。ということは現状出来ませんが、各金融機関に届け出ることで、年1回程度の変更は認められます。
最低掛け金5,000円まで減らすことも出来るので、転職やボーナス減少などで家計が厳しくなった場合は掛け金変更も出来る という点だけは知っておいて下さい。
まとめ
以上、iDeCoの概要と、メリット・デメリットを紹介しました。
国策として老後資金を自分で形成しましょう。という意図が見えます。
公的年金があてにならない時代、さらに高齢化社会という背景において老後の生活は自分で守る という気概をもっていまを生きていきたいものです。
そんな人にiDeCoは非常に節税効果やメリットが多い制度だと思います。
是非検討をしてみて下さいね。